ベトナムの無料レストラン

今日、ベトナム人経営者から当地の興味深いボランティア団体の活躍の話を聞きました。
 
「ゼロドン」レストランです。ドンはベトナムの通貨。生活に困った人むけの、つまり無料レストランです。
最近、ダナンにも支店が開店したそうです。
一緒に話を聞いていた日本人が質問しました。「どうして経営がなりたつの?」。
 
理由は、起点は「慈善」だが、個人はもとより資産家や財閥や地方政府が寄り添ってくるのだそうです。
当初はコメを寄付したり、ささやかな動きから、やがてゆきだるまのように加速するんだそうです。
 
「じゃあ、この運動に参加する連中のメリットはなに」と、日本人が聞きました。
「慈善」や「善意」に関係したいという欲求が吸引力になるんですよ、と、ベトナム人は言いました。
 
「じゃあ、その団体にもしたたかな狙いがあるんでしょう」と、日本人が言いました。
「有力者や組織のトップと容易に関係がこうちくできる、というメリットです」とベトナム人が言いました。
 
「じゃあ、それは、どんな具体的なメリットなんだ」と日本人が言いました。
組織を急速に盤石にして拡大しておおきなメリットを庶民に還元して、関係者は単独では手に入れられない満足を得ることができるメリットですよ。さらに、財閥(ベトナムに10グループくらいある)も名をつらねないとまずいとおもうので手を挙げてくるんですよ。」とベトナム人は言いました。
 
「ふ~ん」と日本人は言いました。「日本ではボランティアというと、名もなく貧しく美しくのイメージだけどな~」。
ベトナム人は言いました。「ほんとうに奉仕をする人は、黙ってやりますけどね(笑)」。
 
このベトナム人は、ボランティア団体をつくって活動した経験で、組織が拡大すればするほど、協力者にペコペコ物乞いみたいに頭を下げることになって、それが疑問でやめちゃったそうです。
 
それで、彼は、この新しい「ゼロドンレストラン」に共感したらしいです。
現実主義のひとびとと、社会主義の国で、おもしろいな、と思いました。
 
昔、NPOの仕事で、仙台の大きなNPOに取材に行った時のショックを思い出しました
主婦のささやかな弱者救済(孤独老人へ弁当を届けるなど)で始まった団体が、並みの企業以上に成長し
たまたま見学した総会の議題が、職員への給与や社会保険制度の充実とか個人情報リスク管理だとか経営の効率化、などでびっくりしました。
 
投資家への配当の負担もなく、収益はそのまま事業の充実のためにフル回転するから、民間ライバル企業が悲鳴をあげて、行政に対して規制するように要望がでていたな。
 
配送運転手は、ヤマト運輸から有休で派遣されたプロ運転手とか、車庫で見た車は大手銀行の寄付した電気自動車とか。3階建ての本部の一階は、消費者の意見を聞く喫茶店だったな~。
へ~、日本でもこんなのがあるんだ、と。
 
徹底したロックダウンの解除で、大失業から立ち直りつつあるダナンは、市民の顔色も晴れやかで
「チュック ムン ナムィ(新年あけましておめでとう)」と冗談交じりの挨拶を交わしています。